54.継承
2020年06月22日
あ
気が付いたら、
そのお店はなくなっていました。
久しぶりに美味しいお蕎麦を食べたくて地元のそのお店に行ったら。。
なんでよ閉店していました。
東京の田舎と呼ばれる我が練馬のすぐ隣杉並区で、
めづらしくお蕎麦でミシュラン星を獲った優良店で
「今日は美味い蕎麦が食いたい」
そんな日に行く少し値の張る大好きなお店。
店がなくなることを露ほども知らずたまたま行った前回、
こころなしか初代店主が奥の裏方にまわっているように見えて、
見ず知らずの30代くらいの男が2代目候補みたいな顔して厨房にいました。
自分にとっては親父の還暦の祝いに予約して使った程、特別な思い入れのある店だったからこそ、
その日は色々と良くなかったので諫言したら、お金を返金されたのがその店との最後でした(苦笑)
初代店主は、脱サラまでして大好きだった蕎麦屋を開いた武骨で静かで繊細な人だった。
彼のつくる一品料理並び蕎麦は、彼の纏うオーラそのもの。
武骨にして甘美で緻密だった。
まだ10年そこそこしかやってなかったはず。
場所も微妙都営住宅の1階で、交通も悪かったし、少し高かったし、休みも不定休だった。
でもそんなんお構い無しでいつも客が入っていた。
勝手な想像だけど、初代は10年でやりきったんだろうと思う。
なんか最後に見た初代には、なんとなく作り疲れというか、蕎麦へのほどばしる情熱が感じとれなくなっていた。
だからもう2代目に譲るつもりで裏方にまわってサポートしていたんだと思う。
蕎麦に対して生き急ぐ感じ、初代のそこが、開店してすぐにミシュランを獲らせたのだと思う。
なんか本当に全ては当たり前じゃないよなって。。
そして継承してゆく事の難しさ。
去年はあったのに。。
もう味わえない。
味わう手段もない。
ある日突然俺の頭の辞書から消えたのだ。
なんか。。なんかほんと刹那ですよね全て。
毎度の事、無くなってわかる有り難みと失われた安心感。
自分の好きな時間や空間は、刹那だからこそとどめたくて立ち止まり必死に味わうんだけど。。
確かに人生って1日24時間じゃ足らない。
継承することの難しさ。
在り続けることの難しさ。